坊がつる

2020年5月17日


思いがけず晴れた日曜日。
ほぼ1ヶ月ぶりの山行に向かった。

吉部から入山し坊がつるをめざす。
坊がつる北端に着くと上空には青空が広がっている。
咲き乱れるハルリンドウを撮影中、うれしい出会いがあった。
やがてゴマさんが到着。
一緒に法華院へ向かい、外のベンチで「本当の山ご飯」を食べる。
坊がつるにもどって花の撮影をして下山。
ところが大船林道を下山中、なんとも恥ずかしい失敗をしてしまった。
ゴマさんに見つけてもらった花を撮影しながら無事に下山した。

6:20吉部→7:15~7:35暮雨の滝→8:40坊がつる北端→9:00坊がつる→10:35~11:35法華院(昼食)
→11:50坊がつる→12:30坊がつる北端→大船林道→14:10吉部




5月14日に緊急事態宣言が解除された。
みなさんこの日を待ちに待っていたのではないだろうか。
それはもちろん私とて同じこと。
そして私にはもう一つ解除されるのを待っていたものがあった。
それは牧ノ戸駐車場の封鎖。
緊急事態宣言が発令されてから、牧ノ戸や長者原などの駐車場が閉鎖された。
それ以来、毎日とは言わないが時折牧ノ戸のライブカメラをチェックしていた。
緊急事態宣言が解除されても、公共の駐車場の封鎖がそのままなら山行はできない。

そして15日。勤務が終わるとすぐに、スマホで牧ノ戸ライブカメラをチェックしてみた。
よく見ると入り口に置かれていたコーンが消えている。
思わず「やったー!」と叫んでしまった。
当然周囲の同僚が「何事?」と聞いてくる。
その問いに答えると、みなさん私の山好きを知っているので、
「よかったね」と言ってくれた(ありがたい)。
「これでやっと山に行けます。長かった~」と話すうち、思わず涙がにじんできた。


思えば前回の山行以降、じっと我慢してきた。
もちろん、私が我慢していることは単なる趣味に過ぎない。
仕事ができず、困窮していらっしゃる方に比べれば何でもない。
だが、毎週のように山行することでリフレッシュしてきた私にとって、
山行できないことは本当につらかった。

2年前の4月に骨折したときも3ヶ月山行できなかったが、
その時は「自分の不注意でケガしたんだから」とあきらめがつき、
3ヶ月山行できなくてもそれほどつらくはなかった。

だが今回は違った。私にはどうしようもないところが原因である。
しかも、ケガならばそのうち治れば山行できるとわかっているが、
この緊急事態宣言は一体いつ解除されるのか、先が見えなかった。
先が見えない状態で我慢するのは、つらい。
そんな状況で日々たまっていくストレスをなんとか解消できたのは、
毎日のように作った「おうちで山ご飯」だったと思う。
明日の「山ご飯」を考えている間、その日の「山ご飯」を作っている間は、
ちょっとだけだが「山と繋がっている」と感じられるひとときだった。


そんな日々もようやく終わり、山行できる。
もちろん、気をつけなければいけないことはたくさんある。
県をまたいでの山行はしないこと。公共交通機関を使わないこと。
3密にならないようにすること(避難小屋の使用は原則として禁止されている)。
登山口までの行き帰りでも、3密にならないように配慮が必要である。
そして、医療に負担をかけないよう、慎重な行動が求められる。
そのようなことに気をつけることで、山行が可能になるということだ。


そういうことをふまえた上で、今回の山行を考えた。
天気は晴れ模様とはいえ、すっきりと晴れるかどうかは定かではない。
しかも早朝までは雨が降るという。
その段階で牧ノ戸ルートはやめた。再開最初が泥濘ではつらい(笑)。
黒岳(前岳)や三俣山のシャクナゲも考えたのだが、
朝まで雨が降る(しかも前日はかなりの雨)となれば花は傷んでいるだろう。
そこで、久しぶりなのでムリせず、坊がつるまでの「リハビリ登山」をすることにした。
決め手になったのは、前日ゴマさんからLINEで送られてきた次の一文。
「坊がつるではハルリンドウが咲き乱れてるんじゃないの?」
以前撮影した「ハルリンドウ越しの三俣山」をもう一度この目で見たい。




山行前日はうれしくてなかなか寝付けなかった。
まるで遠足前日の小学生のようだ。
しかもアラームよりもずいぶん早く目覚めてしまった。
慎重に運転して6時前に吉部駐車場到着。
今日は坊がつるまでのピストンなので、さすがに早過ぎた。
ゴマさんが到着するのを待たず、一足先に入山することにした。



この見慣れた急斜面を登り始める。
登山を自粛している間も筋トレ(スクワット)をしてきたおかげで
この急登も全く苦にならない。



後半の急登を登る。
筋トレは続けたが、ジョギングは1週間で途切れてしまった。
体力的にはちょっと不安だ。



急登を登り終えると、タイミンガサに守られるように1輪の白い花が咲いている。



ユキザサ


新緑の中を歩いていく。



立ち止まって新緑を見上げる。
なんていい色だろう。



時間に余裕があるので暮雨の滝に下る。



このカエデが紅葉したらいい感じの写真になりそうだ。


登山道にもどり、坊がつるをめざす。



ヤマシャクヤクの花期はとっくに終わり、果実が膨らみ始めている。



逆光でミツバツツジの花を撮影。
すでに終わったのがほとんどだったが、この1本だけはまだ咲き残っていた。



アセビの新芽をマクロレンズで撮影。
時間に余裕があるとこんな撮影もじっくりできる。



そしてもう1枚。今度は逆光で。


坊がつるの北端が近づいてきた。
もうすぐくじゅうの山々に再会できるぞ。



朝日を受けて新緑が輝いている。
(背景は平治岳)



川と新緑と山。まるで1枚の絵のようだ。



平治岳の新緑を見て思わず歓声をあげた。それほどきれい。
だが、残念ながら私の腕ではその美しさを写真に収めることは難しい。



やがて坊がつるの北端に到着。
三俣山や中岳・天狗が城、白口岳を望む。
1ヶ月ぶりにくじゅうの山々を見て「やっと戻ってきた」と感じた。
この場所に腰を下ろし、小休憩。幸せなひととき。



坊がつるの湿地の緑色もいい。


やがて今日のねらいのハルリンドウが次々に現れてきた。
ザックを下ろし、撮影タイムだ。



秋のリンドウに比べて小ぶりなのがかわいい。



そしてもう1枚。



もう何枚撮ったかわからないほど撮影に夢中。


あちこち歩き回りながら、ねらいの写真が撮影できるポイントを探す。
「ここだ」と思ったら地べたに寝っ転がり、カメラを構える。
その繰り返し。



そしてようやくこの写真が撮影できた。
今日はこれで満足だ。


実は私と同じように寝っ転がって撮影している女性がいることに気づいていた。
きっと私と同じように山で出会う花に魅せられた方だろう。
そこで思い切って声を掛けてみた。
すると、以前ちょっとだけやっていたtwitterで何度かやりとりをした「ルリ玉あざみ」さんだと判明!
ルリ玉あざみさんは私のHPを見て下さっているということで、話が盛り上がってしまった。
(その間、ご主人は傍らでじっと待って下さっていた…)
ゴマさんとも旧知の仲だそうで、「もうすぐ来ると思いますよ」とお伝えした。



綿毛のぼんぼり
(残念ながらセイヨウタンポポは外来種である)


やがてゴマさんが到着。一緒に法華院に向かう。
その途中、先ほどのルリ玉あざみさんとゴマさんが久しぶりの再会を果たした。



法華院温泉山荘に到着。


今までなら談話室に入って昼食にするのだが、3密を避けるため、外のベンチにに腰掛けて昼食にする。



今日の食材。
ベーコン、タマネギ・ニンニク、カルボナーラソース。
カルボナーラソースは「おうちで山ご飯」で使ったときの残りを持ってきた。



スパゲッティ・カルボナーラが完成。右はビーフコンソメ。



これがほんとの「山ご飯」。「くじゅうで山ご飯」だ。
まさに最高の気分。同じものなのに山で食べると実においしい。


食後のコーヒーを飲み、ゴマさんと2人、楽しい時間を過ごした。
そろそろ腰を上げて花の撮影に向かいましょう。



法華院の南向きの場所ではミヤマキリシマが咲き始めている。




「今年はミヤマキリシマを見られるのだろうか」と心配していたが、
このように見ることができてよかった…。


その後は坊がつるの某所に向かい、小さな植物を探す。
以前も見つけているのだが、なにせ小さいのでなかなか見つからない。
数分間じっと眺め、目が慣れてきた頃、ようやく見つけた。



それがこれ。モウセンゴケ。
大きさは5ミリ程度だ。まさに目をこらさなければ見つけられない。
なお、コケという名前がついているがコケ類ではなく、種子植物である。
全国的に絶滅危惧種に指定されている。


もうこれで十分満足した。そろそろ下ることにしましょう。



三俣山を眺めるゴマさん。



平治岳をもう一度見上げる。
周囲の他の山と比べると平治岳は特に新緑が色鮮やかだ。
きっと植生が他の山と微妙に違うのだろう。


ゴマさんと楽しく会話しながら大船林道を下っていく。


ところがここで事件発生!
ゴマさんが突然、「この風景何?ここ(大船林道)でこの風景、見たことない!」と言うではないか。



その風景がこれ。私たちが歩いている前方を撮影したもの。
道が消えてしまっているように見えるが、これはたぶん道が下りになっているのだろう。
確かにこの風景、ここでは見たことがない。
「見たことがない」というはどういうことか。それは、私たちが道を間違えたということだ。
下山道は大船林道から分岐して樹林帯を下っていく。
その分岐を見落としたということなのだ。
このルートは何十回も下っているが、こんなことは初めてだ。
(この失敗は恥ずかしくて掲載するのはやめようかと思ったのだが、正直に白状しておく)


ゴマさんと笑いながら来た道をもどるはめになってしまった。



5分ほどで本来の分岐に戻ってきた。
なんでこんなわかりやすい分岐を見落としたんだろう。


ここからは私が先に歩き、花を探しながら下っていく。
だが、先に花を見つけるのは私ではなく、後ろを歩いているゴマさんだ。



タニギキョウ
米粒ほどの大きさの小さな花である。



クルマムグラはもっと小さい。
こんな小さい花、私には見つけられない。



コケイラン




チャルメルソウの仲間のようだが、同定は難しい。



ギンリョウソウ


久しぶりにくじゅうの山を歩き、花たちにも会うことができた。
これでしばらくの間、元気に頑張れそうだ。


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