坊がつる

2020年7月19日


今回の九州地方豪雨被害に遭われた被災者の方々にお見舞い申し上げます。


九州豪雨でこのところ山行どころではなかった。
ようやく今週末はなんとか山行できそうだ。
19日(日)の天気予報は「くもり午後からは雨」という予報。
そこで長者原から坊がつるまでのピストンとなった。

5時半に長者原を出発。
豪雨のすさまじさが残る登山道を歩いていく。
やがて雨が池に到着し小休憩。
今度は坊がつるへと下っていく。
坊がつるに着くと、なんと青空が広がっている。
法華院山荘に向かうと、すごいことになっていた。
坊がつるに引き返し、早めの昼食。
ガスのかかる三俣山を見上げながらコーヒーを飲む。
ピストンなので淡々と下っていく。
タデ原で花散策をし、久しぶりの山行を終えた。

5:25長者原→6:50~7:05雨が池→7:50坊がつる→8:10法華院→8:25~9:45坊がつる(昼食)→10:40雨が池→11:45タデ原で花散策→12:20長者原




九州北部地方を襲った豪雨被害がすさまじい。
ニュースを見ると言葉を失ってしまう。
くじゅうもがけ崩れなどにより至る所で道路が寸断され、
とても登山どころではなかった。

そんな状況が長く続き、メンタルがおかしくなってしまった。
毎週登れている間は気分が高揚して快調なのだが、
2週間、3週間と登れない日々が続いてしまうと、これがいけない。
勤務中はやるべきことを必死にまじめにやっているが、
自宅にいるときや週末の休日がよくない。
気持ちが沈んでしまってどうしようもないのだ。

この週末は雨も一段落したようで、
くじゅう周辺の道路もなんとか通れるようになったらしい。
そこで、久しぶりに山行することにした。
天気予報では土曜日が晴れ。
ところがその土曜日はいつもの休日出勤が入っている。
翌週に大きな行事がある関係で、中止にはできない。
しかも昨年同様、1人で担当しているため代わりもいない。
そういうわけで土曜日は晴れた空を見上げながら仕事に励んだ。


ようやく山行できるようになった19日(日)。
早朝5時過ぎに牧ノ戸駐車場に到着したが、深いガス。
今日はくもりの予報なのでこのガスは晴れない可能性が高いと考えた。
予定では牧ノ戸から行けるところまで(扇ガ鼻か星生か)と考えていたが
展望がなければ牧ノ戸から入山しなくてもいいか…。
そこで急遽長者原から坊がつるまでのピストンに変更した。



平治号にあいさつして出発。
正面に見えるはずの指山と三俣山は深いガスの中。
だが今日は山頂をめざさないことにしたのでガスでも問題なし。
幸い雨の心配はなさそうだ。



ハンカイソウ越しにガスかかる指山を望む。



ノハナショウブは今が盛り。



ヤマトラノオ


だが、気楽に歩いていたのもここまで。
タデ原を抜けると、とたんに雰囲気が一変した。
これまでの豪雨で登山道が荒れているのだ。



まずは流水のため川のようになっているところを歩く。
なお、入山時は暗くて撮影できなかったため、
この写真は下山時のものである。



そこを抜けると今度は土石流による石が登山道にも流れ込んでいた。
これでは慣れない人はルートがわからないのではないだろうか。



土石流の支流(?)が地面をえぐったのだろう。



大量の石が積み重なって残されている。
これがすべて流されて来たんだ…


やがて大土石流の跡にやってきた。
この土石流は私がくじゅう登山を始めた2年後の2005年7月10日に発生した。
私はその約1ヶ月後の8月12日に山行している。



その時の写真がこれ。上流側を撮影したもの。
(手ぶれしているがご勘弁を)



これは下流側を撮影したもの。
私はこの前年(登山1年目)の9月にここを歩いているのだが、
その時にはこんな風景など全くなかった。
自然の猛威に驚いたのをよく覚えている。



そして今回の写真。
これは上流側を撮影。
大量の土砂が流れてきたことがわかる。



これは下流側。
中央に見える岩は(遠くてわかりにくいだろうが)、人の身長を優に越える大きさ。
「これが転がってきたのか!」と驚く巨大さだった。


土石流跡を過ぎるといつもの登山道。
そろそろ雨が池だ。



ウツボグサ



チダケサシ



雨が池に到着した。
水が溜まっているわけでもなく、三俣山が見えるわけでもない。
花も(少なくともすぐそばには)咲いていない。
それでも腰を下ろして休憩した。
夏の行動食の定番「羽衣あられ」を食べる。



シライトソウ



シモツケ



木々の間から坊がつるが見えた。
大船山頂はガスに覆われている。まあそうだろうな…
と言うより、こんなにすっきりと坊がつるが見下ろせたことの方が意外だった。


ここからも荒れた状態の登山道を慎重に、淡々と下っていく。


もうすぐ坊がつるだ。
山頂はガスっているだろうが、雨さえ降らなければいいや。
そう思っていたのだが…



なんと、坊がつるに着いてみると晴れていた。



大船山も見えている。
これはいいぞ!一気にテンションが上がる。



ンチで小休憩。気持ちいい~(*^▽^*)


小休憩を終え、とりあえず法華院に向かうことにした。
ところが、向かう法華院の風景が何かおかしい。



何がおかしいか、わかるだろうか。



近づくにつれ、状況が克明にわかってきた。
巨大な土石流が法華院温泉のすぐ近くに発生したのだ。



土石流跡には大量の水が流れ、まるで川のようだ。
その川をまたぐようにして10人以上の方々が作業中。
よく観察すると、小さな石をバケツリレーして車に積んでいるのだとわかった。



作業している方々のすぐそばを通って法華院山荘に到着。
ここで休憩するつもりだったのだが、作業しているそばで休憩するのは気が引ける。
そこで水を補給しただけですぐに出発した。


向かうのは某所。



今年もヤマオダマキに会えた。
だがこのヤマオダマキ、よく見ると花弁に土がついている。
そうか、あなたも被災されたんですね。
無事で何よりでした。



撮影を終え、木道で三俣山を見上げる。
さてこれからどうしようか。
選択肢は3つ。
1つ目は一番ハード。ここから南峰に直登し、すがもり越経由で下山するというもの。
2つ目は中間のハードさ。北千里浜経由ですがもり越へ。ガス次第で西峰に行き、下山する。
3つ目は一番楽なルート。坊がつるで昼食。そのままピストンして下山するというもの。
思案すること15分。「よし、直登しよう」「やっぱり北千里浜に」と何度も考えたが
結局一番楽な3つ目のルートに決定。
決め手になったのは、明日が勤務日だということと、
この3週間ほどトレーニングを何もしていないということ。
今の体力・筋力ではムリしない方がよさそうだ。
(実は、この判断が正解だったことが帰宅後にわかることになるとはこのときは思いもしなかった)


野営場の木陰に腰を下ろし、まだ8時半だが昼食作りにとりかかる。
「8時半は朝食では」という方も多いだろう(それが普通かも)。
だが私の場合、朝食は車中で3時に食べている。
そのときから既に5時間半。お腹も空いてきた頃だ。



今日の食材。
今回は手抜き。
自分で手を掛けて準備したのは中央下のネギのみ。
後はスーパーで購入したものだ。



味噌ラーメンの完成。
手抜きのようだが、ネギが加わるだけで雰囲気が一変!
「手を掛けた感」があふれている。(それは言い過ぎか)笑



腰を下ろしているのは野営場なのだが、
この写真に違和感を持たれた方もおられるだろう。
野営場にこんな砂はない。
この砂はすぐ近くを流れている川があふれて流れ出たということだと思われる。


ラーメンを食べ、コーヒーを飲む。
のんびりと時間が過ぎていく至福の時間。
その間、ガスがかかったり晴れたりする三俣山を眺める。


さて、まだ10時前だが、そろそろ下山しようか。



木道にてイブキトラノオ越しにガスかかる大船山を望む。



坊がつるを下っていくと、土石流のところで小石を積んでいた方々が
その石を荒れた道に入れて補修しているところだった。



石だけでなく砂を入れて補修が完成したのがこの状態。
作業されている横を通過するとき、「お疲れさまです」と声を掛けた。
私にできることはこれぐらいしかない。


下る途中、ふと「川を渡渉する場所のコンクリートは無事だろうか」と思い立ち、
川の渡渉点に行ってみた。すると…



コンクリートブロックどころか、その下の土台の部分も根こそぎ破壊されてしまっていた…


下山はピストンなので淡々と下るのみ。



雨が池では青空ではないものの三俣山が見えた。


タデ原まで下り、一周しながら花散策。



ハンカイソウ越しに指山を見上げる。



キスゲ



クサレダマ



シモツケソウ



ヒメユリ



早くも色づき始めたヒゴタイ



ヒゴタイ越しに三俣山を見上げて山行を終えた。


帰宅して夕食を食べている時のこと。
NHKのニュースで「九重連山の登山道が荒れています」と言っている。
その中で「長者原ビジターセンターのHPで登山道の状況を見ることができます」と紹介された。
そこで検索してみた。
HPのトップに「令和2年7月豪雨によるくじゅう連山の登山道の状況4以降」とある。
そこには現時点での登山道の状況が地図に表示されている。
ダウンロードしてみた。



至る所で土石流が発生し通行不能になっていることがわかる。
大船山には今水や岳麓寺からは入山できそうにない。
くたみ分かれから佐渡窪に向かうルートは通行不能。
赤川から久住山へ直登するルートもムリ。
(このルートの扇ガ鼻へ向かうルートには「もともと荒れています」と書かれてある)
男池からのルートも入山不能だ。
吉部にも行けないかもしれない。
さらに、すがもりから長者原へのルートにも土石流が発生し通行不能になっている。

ということは…もし坊がつるで思案した結果、あと2つの候補を選んでいたら…
すがもり越から下山しようにも長者原へは下ることができなかったはずだ。
しかたなく大曲に下り、あとは車道を歩くということになっただろう。
それだとかなりの時間がかかりそうだ。
あのとき、こんな状況とは知らずにお手軽なピストンを選んだのは大正解だったのだ。


しばらくの間は山行するにも最新の状況を調べておく必要があることを痛感した。


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